「wavelet変換を用いた日常生活における心音分析の研究」の続きになります。
SS法処理の課程で、フーリエ変換逆変換をした際「歪み」が生じるため、識別率が低下したと考えました。
ウェーブレット変換を用いることで心音の識別が可能であることが実証されているので、多重解像度解析を用いた離散ウェーブレット変換を用いて雑音抑圧を行いました。
入力信号に対しレベル1スケーリング関数展開することで、ある周波数帯の波形であるレベル1ウェーブレット係数と、入力信号からレベル1ウェーブレット係数を引いた残りの波形が導出され、その波形にレベル2スケーリング関数展開を適用して…と指定した回数分だけ入力信号を分解(多重解像度解析)することができます。
図1は雑音を付加した心音であり、図2は多重解像度解析を用いてウェーブレット変換したときのそれぞれのレベルのウェーブレット係数を表しています。雑音はすべての周波数帯に属するため、すべてのレベルの展開係数に影響するため、値が小さい係数で表されます。そこで、雑音の係数より大きい閾値Tを設定しTより小さい値を0にして再構成することで、図3のように雑音抑圧をすることができます。
図1
図2
図3
閾値を適用する際、シングルレベル閾値(sln)とマルチレベル閾値(mln)があります。slnはレベル1ウェーブレット展開係数から閾値を決定し,全てのレベルの展開係数に適用します。また、mlnはそれぞれのレベル毎に閾値を決定し、適用します。
雑音抑圧をする場合、ウェーブレット関数の種類や分解レベル、閾値の検討が必要となるので、心音に対する雑音抑圧に適するウェーブレット関数の種類とシングルレベル閾値やマルチレベル閾値について調査
種々の心音に対し雑音処理に効果的なウェーブレット関数の種類や閾値について調査
正常心音と異常心音あわせて16種の心音にピンクノイズを付加し、雑音抑圧を行い評価する。評価尺度はSN比と元の心音と雑音抑圧した心音がどのくらい似ているかを表すFit係数を用います。
表1は実験条件を表します。
表1
実験の結果を表2で表します。ウェーブレット関数に関しては、Symlet14のウェーブレット関数を用いるとその他のウェーブレット関数より雑音抑圧できることがわかりました。また、SN比が低い有色雑音の場合マルチレベル閾値を用いることが雑音抑圧に効果的であることがわかりました。
表2
心音に付加される雑音を抑圧するため、ウェーブレット係数上で雑音抑圧することを提案した。しかし、雑音抑圧するためにはウェーブレット関数などのパラメータが必要になるので、適切なパラメータを調査しました。
実験の結果、ウェーブレット関数はSymlet14でSN比が低い有色雑音の場合マルチレベル閾値を用いることが雑音抑圧に効果的であることがわかりました。
続きは「ウェーブレット変換による雑音抑圧を用いた心音識別の研究」を参照してください。