研究背景・目的
5.1chサラウンドシステムといった多数のスピーカを用いることによって高臨場な音場を再現することが可能となってきたが、スピーカの設置の困難さにより普及が進まないと考えられる。
そこで、スピーカを設置せずとも高臨場な音場を再現できるようなヘッドホン再生の研究を行った。
従来研究
臨場感を出すためには、残響感(音の響き)と音像定位(音の到来方向)の再現を行っていく必要がある。
そこで、音像定位の誤差を少なくする手法として動的バイノーラル信号を用いる手法が挙げられている。(「動けよ、さらば定位されん」2014 日本音響学会 平原)
従来研究では、テレヘッドを用いて収音を行おり、テレヘッドの詳細に関しては下の映像をご覧ください
アプローチ方法
テレヘッドは収音場所に移動させる手間がかかるといった問題があると考え、信号処理によって動的バイノーラル信号の再現を行っていきたいと考えた。
信号処理によって動的バイノーラル信号を再現する方法として頭部運動に合わせて受聴者のHRTFを切り替えていく方法が考えられる。
しかし、HRTFは測定していない方向の再現ができないため、すでに測定されたHRTFと音の到来方向を再現するアンビソニックスと呼ばれる技術を用いて動的バイノーラル信号の生成を行う。
実験環境
本実験ではkinectと呼ばれるデバイスを用いて受聴者の頭部運動を取得した。
使用機器を以下図のように配置する。
5秒間白色雑音を再生し、再生した後に受聴者には音が聞こえてきた方向を回答してもらった。
頭部静止時実験では受聴者には頭を動かさないように指示し、頭部追従時では受聴者には必ず頭を動かすように指示した。
実験結果
音像定位実験の散布図を以下に示す。
頭部静止時に比べ東部追従時のほうが
・右上がり対角線上に大きく外れて知覚した受聴者の数が減少
・右上がり対角線上に円が集中
の2点が言え、呈示角度との誤差の大きさが小さくなっていることがわかる。
まとめ
頭部静止時に比べ、頭部追従時のほうが呈示角度との誤差の大きさが小さくなっており、頭部追従による音像定位の向上効果が見られることがわかった。
そのため、HRTFとアンビソニックスを用いた手法でも動的バイノーラル信号の生成が可能であることがわかった。
今後の課題
頭部追従を行った場合でも右上がり対角線上外に大きな円が存在しているため、より定位精度を向上させていく必要がある。
本研究では、水平面上のみしか検証を行っていないため正中面でも動的バイノーラル信号の生成が可能か検証を行っていく必要がある。
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