スマートフォンのマイクロホンと加速度センサを利用し,専用ハードウェアなしに日々の睡眠状態を把握するシステムの構築を目的としています。
図1 システムの利用イメージ
(a) 就寝時にスマートフォンアプリを起動し枕元におきます。
(b) アプリは睡眠中の音や加速度データを取得し,睡眠状態を把握します。
(c) 把握した睡眠状態はサーバへ送られ,集まったデータを分析します。
(d) ユーザは日々の睡眠状態や分析結果を健康の維持・増進に利用します。
このようなシステムを目指しています。
いびきをしている時間(いびき区間)を音と加速度で検出する手法に取り組んでいます。
音,いびき音特徴,加速度データを組み合わせて,いびき区間を検出する手法を検討しています。
図2 いびき区間検出の流れ
音の平均パワー(大きさ)でいびき区間と非いびき区間を判定します。
この研究ではいびき一つ一つを検出するのではなく,いびきを継続していた時間を検出したいので,呼吸の切り替わり時の非いびき区間はいびき区間とします。また,いびきは連続して現れるという仮定の下に連続していないいびき区間は非いびき区間とします。
図3 いびき音の例
寝ている人が動くと,その動きが布団やベッドを通じてスマートフォンに伝わります。スマートフォンアプリはその動きを加速度として捉えます。通常,いびきをしているときは 人の大きな動きはありませんので,動きに伴う音は寝返り等で生じている音とみなしていびき区間から排除します。
図4 加速度データの例
現在,iOS(iPhone, iPod touch)用のアプリケーションを開発しています。
図5 計測アプリケーション
5時間41分7秒の睡眠時の音データを人が分析し,いびき区間と非いびき区間を判定した結果が水色区間になります。いびき区間検出の手法を用いて,いびき区間を検出した結果が赤色区間になります。
人の分析結果(水色区間)を正解として,検出結果(赤色区間)を評価すると,適合率89.8%,再現率85%,F値0.873という結果が得られました。
図6 検出結果の例
検出率の向上はもちろんですが,例えば,加速度データを利用して睡眠中の寝返り回数を推定したり,歯ぎしりや寝言等の睡眠時の状態を検出する手法を検討し,システムを構築します。
検出結果例で用いている評価指標について簡単に説明します。