研究の背景
- 近年、3Dテレビや3D映画等の視覚的な高臨場感の研究が進んでいるとともに、音の高臨場の研究も進められている。音の高臨場の研究にインパルス応答がある。
研究の目的
- 高臨場な音場の実現のためには部屋の特性(インパルス応答)の測定が必要である。しかし、測定には時間やコストが掛かるので補間を使って測定することで時間・コストの削減が目的である。
従来研究
- 水平面上の頭部のインパルス応答に対して、線形二点補間を用いて推定する手法を提案している。
- マイクロホンH1とマイクロホンH2の測定データから真ん中のマイクロホンを補間する場合、以下で求める。
解決したい課題
- 線形二点補間は測定角度間隔が増えたり、マイクロホンとスピーカの距離が異なると補間精度が落ちる課題がある。
提案法
- インパルス応答を球面波と平面波のモデル式を用いて音響モデル化する。
- インパルス応答を球面波と平面波に分離してそれぞれを補間してから、補間した球面波と平面波を結合して補間したインパルス応答にする。分離の仕方はインパルス応答の遅延時間を求めて数サンプル加えて切り出したものを球面波、切り出した球面波の後ろの波を平面波とした。
- 球面波のモデル式のパラメータAと平面波のモデル式のパラメータB,cosθ,sinθを最小二乗法を用いて推定する。
- 推定したモデル式のパラメータと補間したい箇所の座標を代入して補間する。
- 最後に、補間した球面波と平面波を結合してインパルス応答の補間をする。
実験
- 実験の目的は実測インパルス応答での補間精度の確認のため行った。
- スピーカ1つとマイクロホン5つの配置は以下の通りである。
実験結果
- 補間精度の評価尺度はSD法とSDR法を用いた。
- 補間はマイクロホン2,3,4を対象に行った。線形二点補間は補間対象の両側に測定データがないといけないため、マイクロホン1,5は補間を行えなかった。
- 提案法と従来法の線形二点補間の平均SDと平均SDRは以下の通りである。橙色が従来法であり緑色が提案法である。
- 評価尺度SDでは提案法の方が従来法より少しではあるが値が小さくなり補間精度が良くなった。評価尺度SDRでは提案法の方が従来法より値が大きくなり補間精度が良くなった。
まとめ
- 部屋の特性の測定による時間・コストの削減のために、インパルス応答の音響モデル式による補間法を提案した。
- 実験の結果より、提案法は従来法より歪み(SD)は小さくなり誤差(SDR)は大きくなり補間精度が良くなった。
今後の課題
- 測定したインパルス応答の位相と補間したインパルス応答の位相の誤差が大きかったので、位相の計算の処理の方法を検討する必要がある。
- マイクロホンの個数の増減(測定データの増減によるパラメータ推定の精度の変化)で補間精度がどうなるかの検証をする必要がある。
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